太宰と弟子たち 展示資料紹介(その2)
- 掲載日2020年7月15日
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三鷹図書館(本館)2階展示コーナーで開催予定だった企画展示の一部をウェブ公開します。 ページ内の記事および写真について、無断転載はおやめください。
弟子たちが太宰に与えた影響
弟子たちが太宰に与えた影響
太宰は身の回りの人を、しばしば作品の題材に取り上げました。ここでは、弟子たちや関係者が太宰の創作にどのような影響を与えたか、紹介していきたいと思います。
『正義と微笑』 (1942年・錦城出版社)
これは、太宰の弟子であった堤重久の弟で、前進座俳優の堤康久が16歳から17歳のころに書いた日記をもとに書かれた作品です。
堤重久(1917年生。)
著作には『太宰治との7年間』『恋と革命 評伝 太宰治』などがあります。
「親友交歓」 (太宰治著『ヴィヨンの妻』1947年・筑摩書房)より)
作中で、小学校時代の親友を自称し<私>の家を訪ねた男が、ウイスキーを飲んで「まむし酒に似てる!」と言います。
この言葉は、小野才八郎が太宰の生家を訪問した際にウイスキーを振舞われ、口にしたものだそうです。その際、太宰は大笑いして「そりゃいいや」と返しました。
小野才八郎(1920年生。2014年没。)
青森県金木町生まれ。太宰が金木町の生家に疎開している時に訪ね、以後師事しました。
「散華」 (太宰治著『佳日』(1944年・筑摩書房)より)
戸石泰一・三田循司が実名で登場する作品。三田が戦地より送った最後の葉書にあった「文学のために死んでください」という言葉に、非常な感銘を受けたことが述べられています。
戸石泰一(1919年生。1978年没)
宮城県生まれ。東大国文学科卒。在学中より太宰に師事し、卒業と同時に召集され南方戦線に赴きました。戦後は八雲書店に入社し、『太宰治全集』の編集に従事しました。
『青い波がくずれる』『五日市街道』などの著作があります。
三田循司(1917年生。1943年没。)
岩手県生まれ。戸石とともに太宰宅を訪問しました。後に山岸外史のもとで詩作を学んでいましたが、アリューシャン列島アッツ島にて戦死しました。
参考文献
- 永遠の太宰治 生誕110年記念総特集 2019年 河出書房新社
- 太宰治100年目の「グッド・バイ」 2009年 河出書房新社
- 日本近代文学大事典 1984年 講談社
- 平成30年度特別展「太宰治 三鷹とともに―太宰治没後70年―」2018年 公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団 編集
- 三鷹市史 補・資料編 2000年 三鷹市
- 三鷹文学散歩 1990年 三鷹市立図書館